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アンカー 1

中島みゆきの「わかれうた」を聞いて、母に送る歌を書いてみた。

 

別れはいつもついて来る 幸せのうしろをついて来る 中島みゆき
 

 

 実家の母を離れて自宅に帰るときの、ほっとした感じは、何なのだろう?子育てが終わり、現役時代の大波、小波を乗り越え、やっと手にした自由。

 

 だが、その自由は、その自由のいくばくかは、今も、昔を忍び、亡き父の写真の前で、なぜ、死んだと泣き崩れる母に、分けることになる。

 

 だから、その母を置いて自宅に帰るときに感じるほっとした気分は、自分だけの時間、その、しばらくの自由を、大事にしたい。

 

 母が、その年齢(とし)になっても、なんとか、自分で身の回りのことができることに、敬意と感謝の念をこめて、今、しばしの自由を楽しむ。

 

 今、あったこと、やったことを忘れていることを嘆き、お父ちゃん助けて、と泣く母には、もう、息子のこんな思いも、わからなくなっている。

 

 だから、昔のように、話はできないのだが、それでも、昔、幼いころ、お風呂の中、母のひざの上で、いやがる僕の頭を洗ってくれた、あの時の母を想い、今、僕があなたにできること、あなたに悪態をつかれる時も、黙って、うなづき、「お前が作ってくれたご飯は、おいしい」と言われることで、報われた思いで、気をとりなおす。

 

 少しずつ、脳が、母が、壊れゆくのを見守りながら、やがて来る別れの時に、母さん、ありがとうと言えるように、悔いに涙することのないように、今、できるここと、父の葬式の日、喪主として「これからは、母を大事にしてまいります。皆様、よろしくお願いします」とあいさつしたことを、心に刻み、「私は、もう、いいんや。私のことはほっといてくれ」という母のもとへ、また、明日、帰ります。

残されてとまどうものたちは
追いかけてこがれて泣き狂う

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